うつくしきもの

観劇ブログ

この観劇ブログ

観劇素人による素人のための素人の感想をかきちらすブログです。感想っていうか 覚書です。好き勝手書いてあります。

今まで観劇した舞台を並べてフラットに評価するというよりは、事前の期待値を実物がどのぐらい超えたかで作品を評価しています。

かなり極端な喩えですが、

ブロードウェイミュージカルを観に行って期待値どおりの作品を見て、「普通だった」と感想を書くことがあります。

その次の日、近くの高校の文化祭の出し物の演劇を見て、それが期待より良かった場合、「めっちゃ良かった」という場合がありますが、

当然ながら、両者は明確に比較対象ではありません。

こちらのブログで面白いと言っているものが、他の記事で面白くないと言っている作品と比較してレベルが高いかというと必ずしもそうではない。

感想だから、主観しかない。

そういうブログです。

5月末~6月の舞台(ドリライ、錆色のアーマ、八雲、刀ステ、忍ミュ)の感想

すごく間が空いたけど相変わらず舞台には行き続けています。NARUTO以降6月に見た舞台のラインアップと感情的な感想をダイジェスト版でメモっておく。最初に言っておくと五月末から六月の舞台は宝塚以外は全部微妙だった。なのでここでは宝塚の話はしない!!!

・5月27日:ミュージカルテニスの王子様コンサート「DREAMLIVE2017」

5月末のドリライ。あまりにもな解釈違いぶりにキレることも忘れ呆れ果てていました。セットリストはいろんな方がレポしてますし今更だし書きません。いつも通りフィーリングで感想です。

●六角はかわいいし青学も頑張ってたけど氷帝の扱いが規格外すぎて耐えらない。ただ単に出番が多い・・・だけなら(嫌だけど)許すけど明らかに主役を食う勢いで氷帝が飾り立てられてるので辟易しました。9代目お披露目公演にも関わらずリョーマ・手塚ともに試合のなかった六角公演、喋れるダビデにセクシーなバネさん、かわいいいっちゃんとイケメンのサエさん、そしてアニメの葵くんまんまの勢いがある剣太郎に美形の首藤をくわえて、すごくいい六角を揃えて来た。にも、かかわらず、2幕以降は「氷帝氷帝氷帝祭り!!!」みたいな演出で、六角の校歌の新曲も正直「コートで会おう」ほど強烈な名曲でもなく、「マスターピース」は解釈違いの極致を起こして泣きながら帰ってきた、悪夢の六角公演の、次のドリライでこれですよ。相変わらず氷帝が優遇され過ぎ(何曲歌ってんだよ、あとなんで今season?)、跡部役の三浦宏規くんと演出の上島先生がキャラの格好もせずに踊っている謎のVTRを見せられるわ(マジで演出家あの気が触れたのかと思った)、手塚国光がやたら気弱なキャラづけをされているわ(手塚君は不二君に「お前のお蔭だ」なんて言いませんね。)、阿久津仁愛くんの本名ネタ出してくるわ(じゃあ越前リョーマは何処にいんだよ)、「それは誰がやれって言ったの?」みたいな、意味のわからない点が多すぎて放心してました。

口に出すのも嫌だったけど今の3rd立海が楽しすぎて最高なのでもう忘れます。おたき上げ~~~。相変わらず解釈違いな歌がたくさん出て来るけど、キャスティングが最高です。ファンを喜ばせるのが上手い俳優さんが多いですね。応援しています。

上島先生、今までテニミュを育ててきたご実績とご経験は素直に尊敬して感謝もしていますが、なんか、どうしちゃったんでしょうね。テニスの王子様のミュージカルなので上島先生と三浦君のダンスは此処でやることじゃないと思うんですよね。そういうのはオリジナルの舞台でやってほしいものです、客が入るのか知りませんが。

・6月10日:「錆色のアーマ」

流行りの「LDHと愉快な若手俳優たち」型舞台ですね。最近だとMOJO、幽激とかもそうかな。ネルケLDHは何かとタッグを組んでいる様子が見られて面白いですね。若手俳優のファンの間では過去の確執があってあまり評判がよくないLDHですが、劇団EXILEにはテニミュ出身の俳優さんもいたんじゃなかったかなあ。ネルケの松田誠もLDH代表取締役かなんかになったんだっけ?細かい背景はよくわかりませんが、ハイアンドローで界隈で有名な若手俳優がちょい役で出てたり興味深いな~と思ってます。この作品は「逆2.5次元」というだけあってすごく2.5次元ぽい題材とビジュアルだったのと、あと崎山つばさくんがイケメンすぎたのと、アラケンさんが出てたので見に行ってみました。

レポを書こうと意気込んでストーリーを覚えるつもりで見ていたんですが、初見で全部書き起こせるぐらいすごく単純な筋書きの話で、よく言えば王道、悪く言えば凡庸な脚本です。信長役の増田俊樹さんがパンフレットのインタビューで「シンプルな表現の物語」と言ってましたけど、ほんとにそんな感じ・・・。簡単に言うと信長に姉を殺された雑賀孫市が、復讐の為に雑賀衆をつれて信長を攻めるが敗北してその配下となり、比叡山の焼き討ちに行くが色々あってまあ、取り敢えず比叡山は焼き討ちできたんだけど、雑賀衆が離散したり顕如とのバトルがあったり光秀と信長の愛憎めいたあれこれがあったりして、実は孫市のお姉ちゃんが信長の恋人だったことがわかって信長が孫市を殺せなかったり・・・そんな話です。

孫市役の佐藤くんはすごく頑張ってたと思うんですけど、脚本が孫市を魅力的に描き切れてないところがあって、すごい個人的なことで癇癪をおこしたり嫌になっちゃったり、そもそも私怨で仲間を巻き込んで信長の下についたのに自分が嫌になったら信じてついてきた仲間に「雑賀衆解散!!!」って言ってみたり、皆に好かれてる太陽キャラの位置づけでありながら、実際にやっていることはマジで殺意沸くタイプの馬鹿だったのがすごく残念でしたね。

ダブル主演の増田俊樹さんは流石の貫録ですごくいい信長でした。そういえば彼の出ている舞台を生で見るのは初めてでしたが、歌もうまいし演技もすごくいいですね。迫力もあるし。ファン層も彼のファンが一番多いように見えました。増田さんと同じ年の栩原くんの明智光秀はすごくかわいくてほぼ沖田くん。だけど沖田くんより後ろ暗いところがあってキュートでしたね。同じ年にはみえないな。

雑賀衆は知ってる人が揃ってて面白かった。まず一目ぼれしたビジュアル最強の不如帰、崎山つばさくん。顔がめちゃくちゃかわいい。見た目が可愛いのでニコニコ斬殺キャラかと思ったら、意外とイケメンポジで冷静に場を見極めているタイプでありつつ、胸には復讐心と怨念を秘めている二重人格キャラで設定盛り過ぎ太郎でした。とにかくかわいくて何処にいてもきらめいています。ミスター刀ミュ(人間)、荒木健太郎さんの鶴首。この人も相変わらずイケメンで、渋みのあるいい男の役でした。年少の蛍火くんの面倒をみつつ雑賀衆を纏めるいいお兄ちゃん。相変わらず演技派ですね。そして木偶。章平さん。テニミュでタカさんをやって以来、色んな舞台によく出ているなあ。どんな役でも一生懸命やっているのですごく気持ちがいい役者さんです。木偶は凄く攻撃的なビジュアルなんですけど、途中で「嫁もいるし命かけて戦えないから雑賀衆やめたい」とか言い出します。おい!!!ダメだろ!!!!そして神里くんのアゲハ。おかまキャラです。可愛くてよいですね。是非黒ステにレオ姉が来たら彼にやってほしいと思いました。なんか双子の死んだ姉に人格を乗っ取られかけている?みたいな、設定がたくさんあるみたいなんですけど、全部自分で説明してくれるので「それ必要な設定なん?」と思った。そして借金して全身をメカに改造している黒氷、平田さん。彼はファーストの海堂ですね?ヤバい人なんですけど演技が上手いので本当にヤバいひとみがあって好きでした。最後に蛍火、ハイキューにも出てる永田くん、有名だけど舞台を見たことがない、すごい元気で可愛かった気がする、あと黄色かった気がする。

なによりMVPをあげたいのが輝馬ですね。顕如役なんですけど見事な怪演、怪僧でした。途中あまりにも死なないので直接殺したくなった。あと顕如のおつきの歌が上手いお坊さんがいるんだけど、髭はそったほうがいいと思う。お坊さんだし・・・

総評としてはまあビジュアルで満足できたので面白かったと言えなくはないのですが、正直このキャストだから見れた舞台であって、アニメ化したところで大丈夫なのかしら・・・と言う感じがあります。ところであまり続報をきかないのですが、私の耳が悪いだけなのかな?

・6月11日:心霊探偵八雲

北園君を追いかけて行った舞台です。まあ・・・私そもそもミステリ好きじゃないので、原作も読んでないし行くべきではなかったなという感じがあります。主人公の八雲くんは幽霊が見える、死んだ人の声を聴いて事件を解決する大学生。セカンド立海で仁王役をやっていた久保田くんが主演です。相変わらず可愛らしお顔ですが、相変わらずよく台詞を噛む・・・(笑)。美山加恋ちゃんがヒロインで、いわゆる金田一の美雪ちゃんポジですが、今回は殺人事件の容疑をかけられてー!?という話でした。あいかわらず美山加恋ちゃんは演技が上手い。ただ彼女は歌が上手いのでミュージカルに出てほしい。北園君はなんと犯人!!!キングオブ屑、屑を絵にかいたような大学生役でした。他にはセカンド立海で柳役をしていた水石くんが犯人候補の一人で出ていましたね。あの頃はもちもちだった水石君もすっかり精悍な男の人になっていてビックリでした。あと、幽霊の友達の演技と、エリート刑事の人の演技が良かったです。多分八雲に毎回でていると思われる刑事さんはすごく怒鳴る演技をするので見てて疲れました。演出は暗転が多いのが微妙、ただ、衣装が「それっぽく」ていいなと思いました。大学生っぽい服、刑事っぽい服、などなど。品川プリンスのホールははよく使われているわりに初めて行ったんですが、お世辞にもいい環境とは言い難いですね・・・。

・6月11日夜:舞台刀剣乱舞 義伝 暁の独眼竜

末満さんって本当につまらない脚本を書く方ですね。叩かれるほどじゃない、という意見を散見するのですが、確かに巷によくあるくそ舞台の脚本としてならまあ及第点でしょうと思いますよ。でも話題性のある原作と今マーベラスが用意できる限りの最高の役者、良質なセットと衣装とを揃えて此処までピクシブ準拠の面白くない脚本を出してくるのは、怒りを通りこして呆れすら覚えます。なんの解釈もテーマもないのに解釈があるっぽい演出をしてくるのがまた腹立たしい。「これは萌え豚のためのメッセージ性等はない舞台です」と但し書きをしてほしいです。期待するんですよ。鈴木拡樹君にそれっぽいしぐさをされると!!!でも本能寺よりも「それっぽい演出」がなく、結局ただの群像劇で終わったのでまあよかったのかな、と思いました。

前作では不動行光が延々と「何故信長があんな死に方をしなきゃならなかったのか」というどうしようもない問いに懊悩しつづけ、登場する全ての刀にその疑問といら立ちをぶつけて不和を起こし、作中で起こるあらゆるトラブルが彼の癇癪によるものでしかなく、その不安定さを鎮める役をすると思われた山姥切国広の成長ストーリーは実は最後に不動の心に全く響かず、本筋に全く関係がないまま三日月宗近といちゃつき、国広の忠告を無視した不動は最後に光秀を殺そうとしたところで宗三に止められ、今まで散々誰が何を言っても改心しなかったのに何故か宗三のいうことを聞いて光秀を殺すのをやめ、なんとなく成長した感じで話が終わります。書いててほんとにすごいと思った。こんな何の中身もない話なのに3時間もやるし、ぼーっと見てるとミュの「阿津賀志山異聞」ぽく見えるんですよ。ずっと最初最初最初で最後にいきなりクライマックスしかないのに三幕構成っぽくつくれるその手腕には脱帽です。そんな見事なハリボテ物語を展開してくれた舞台・刀剣乱舞ですが、まあ義伝も同じです。今回は不動じゃなくて政宗様が壊れかけのラジオになっただけ。虚伝のテーマが「信長とは何者なのだ」だとすれば義伝のテーマは「天下は見果てぬ夢か」です。この「天下は見果てぬ夢か」を気違いの政宗様が延々に繰り返し続け、分不相応の夢を見たことを歴史修正主義者に付け込まれ、盟友の細川忠興(なんで細川忠興があんなに政宗にホットな友情を抱いているのかよくわからない・・・)や片倉小十郎が散々止めるのも聞かずに関ケ原で東軍に牙をむく・・・という話なんですけど、これもね。そうなんです。ずっと小十郎は止めてるんですよ。忠興も止めてる。「天下は見果てぬ夢です」と言ってるんだよ。言ってるのにさ、全然聞いてない。ぼけ老人みたいに同じこと繰り返す。政宗なんて奥州統一もしてないじゃん。どーしてわからないのかな?戦争になったら領民も死ぬし、お家だって取り潰しになるかもよ?忠興もなぜかすごい友情を感じて色々言ってくれてるのに聞いてないし。しかも最後はやっぱりボロボロになって死ぬ覚悟で自分を止めた小十郎の言葉で天下を諦めるんですよ。なんだそれ?ずっとダメだって言ってたのに結局止められたらやめんのかい!!!みたいな。現実では最後の最後に、みたいなことも勿論あるけど、舞台でそれ!?散々引っ張って結局最初に止められなかったのと同じ方法で阻止できるの!?正気か!?と思いました。初演の時も同じこと思ったわ。

結局刀剣側には主だったストーリ―ラインがないのも印象的だった。国広は隊長として小夜の悩みを聞こうとするけどうまくいかない。歌仙と大倶利伽羅のそりが合わない。小夜と歌仙の細川会。倶利伽羅政宗の史実の選択を軽んずる発言をして、歴史修正に手を染める政宗を止めることができず、結果鶴丸倶利伽羅をかばって歴史修正主義者に取り込まれて黒化し操られバトル。歴史修正によって関ケ原の一日をループする刀剣男士。全部バラバラで本筋がないんですよね。まあ群像劇なのかな。意味とかがないんですよね。原作がないものをそのまま舞台化するとこうなるんだなあ、という感じ。なのにラストでは政宗の今際の際に忠興が来てお前を武士として死なせてやると言って、それを死んでると思われる小十郎が見て泣いてて、さらにそれを伊達組と細川組が見てて、「かっこいいなあ僕らの主は」と燭台切が言って終わるんですよ。嫌全然わかんねえゴメン・・・。感動できない・・・

鶴丸が黒くなるとか、そういうので叩いてる人もいるけど、別に原作でそういう演出NGと言わなかったならそれはそれでいいと思うんだよ。でも純粋に舞台の脚本として駄作なんだよね。2.5だからいいって思うかもしれないけどさ、ミュは300年で人外物・タイムスリップもののロマンの極致(手前味噌)みたいな情緒的な話を書いてきてるのに、ミュより予算高そうなステがこれだとどうしても比べちゃうよ。早く脚本家変えたほうがいいと思うよ。

・6月18日:ミュージカル忍たま乱太郎 第八弾再演 

今年の1月に見て大興奮したミュージカル忍たま乱太郎の第八弾、5年生の初任務の話の再演ですね。最初に言ったけど六月に見た舞台は全部微妙だったので再演もほんとに微妙で哀しくなる出来でした。初演が最高だったので完全に油断してたよ。6月はほんとに舞台を沢山見たのに、一番良かったのは6月24日の宝塚宙組朝夏まなとコンサート「Amotion」でした。ストーリーがないという正義、宝塚という救済。まぁ様超かっこよかったな。今はその話はいいんだけど、忍ミュ再演はすげーーーー改悪だったので、書く気もなくなるわ。

初演がいかに最高だったかという感想はツイッターに書いてたんですけど、簡単に言うとすごい冴えた尾浜勘右衛門が自分の五年生を守るために戦う、五年は拙いなりに初任務を全うする、そういう話だったんですよね。初演のあらずじですけど、まず水軍が海で偵察中にドクタケに襲撃されて負傷し浜に辿り着いたところを五年生が助けて忍術学園に連れてくる。水軍の男衆の手当てをして、ご飯をだしてやったり面倒を見てあげる五年生。水軍負傷の理由を聞き、ドクタケの様子が不穏だというので調査をしようということになり、任務に立候補する竹谷。学園長はやる気満々の竹谷をスルーして六年を指名するが、六年生はい組以外は校外実習で不在、結局五年生が任務に出ることに。そんな五年生を見て、水軍は六年い組の二人に「五年の人たちってどんな感じなん?」と尋ねるけど、五年の評価を聞いてもよくわからない。一方五年の竹谷は去年の六年に比べて自分たちがまだ本格的に任務についていないことを気にしており、初任務にやる気満々。そんな中一人やる気のなさそうな勘右衛門。偵察をから回る五年。炭焼き小屋に潜んでいる敵を勘右衛門が見破って交戦するが、雷蔵の迷い癖で敵を逃がしてしまう。心配した六年からはやいやい言われるが、勘右衛門は「自分たちには自分たちのやり方がある」と言いきる。勘右衛門と三郎の策で乱きりしんの三人を人質と見せかけたりなどして敵を欺き、結局水軍砦に仕掛けられた爆薬の地図を取り返して、最後の船上戦に。全員入り乱れて見せ場作っての大立ち回り、ラストはドクタケの船の船底を破って沈没させることになり、五年全員の得意武器で床を殴って穴をあけ、勝利!初任務完了!大団円。

五年が学級委員長以外ポンコツだったり、船底を得意武器で殴って穴をあけたりする演出がダサかったり、色々突っ込みどころはあるんですが、「がんばれ五年生!」という感じはあったし、一応術も技も使ってはいたし、何より初任務のぎこちなさが可愛くてよかったなあ、と私は思ったんですよね。あとラストで「俺たちの明日は俺たちが作る」と歌いながら船底を叩くんですけど、五年が一致団結して一つの物事に取り組む様子が分かりやすく描かれてて、有り無しはともかくわかりやすい舞台演出としてはよかったです。ああ、五年生はこれから彼らのペースで成長して、いつか彼らなりの六年生になるんだなあ、そして巣立っていくんだな、という成長を思わせる感じもあったし、あまりギャグパートがなくて普段の落乱にない緊張感があったのもすごいよかった。

再演がどうなったかというと、まあ水軍の曲が追加になり、ラストで船を壊すのが水軍のみよしまると重の水焙烙になったっていうところ、あと乱きり心の人質パートがなくなって尾浜と鉢屋の策謀もなくなり、代わりに意味不明な学園長先生のギャグが入るんですよ。すごい。「五年の初任務」がなくなりましたね。ほんと吃驚しました。ミュージカルなんで忍ミュはしっかり曲があるんですけど、全部いいけど、追加曲以外は初演のイメージに合わせて作られてるのでまったく状況にあわない歌になってしまって台無しでした。とくに「俺たちの明日は俺たちが作る~」、貴方、どこが作ってんねん!!!!って話ですよ。あと乱太郎きり丸しんべえは何のために出てきたの?人質パートがなくなると序盤と女装の付き添いしか出番ないので存在価値がなかった。つらい。結局五年がなんだったのかもわからず、水軍が活躍しておわる意味不明な脚本になってしまっているし。何でこうなったんだろ?(すっとぼけです)

まあ初演の脚本も五年が無能過ぎたとか多少無理があったと言えばそれまでなんでしょうが、それにしても再演はひどい話だったなあと思います。学園祭が楽しいといいですねえ・・・。

まあ、餅は餅屋と言う話なんじゃないでしょうかね。

ライブスペクタクル NARUTOを見てきたよ(ネタバレ注意)

期待値★★☆☆☆
評 価★★☆☆☆
上記のような感じですが、舞台NARUTOを見てきました。相変わらずキャスティングは神憑ったものを感じるし、演出も頑張っているし、なにより2幕の蛇結成~サスケvsイタチ戦はめちゃめちゃよかったんですが、全体の完成度としてはあまりに・・・。我愛羅救出~サスケvsイタチ戦までを一公演でやるのは難しいですよ、どう考えても・・・制作の事情もわかるけどね。やっぱりジャンプ作品を舞台化することの難しさを痛感する出来でした。ナルステは前作も見ていて、前作も七班結成~波の国~中忍試験~サスケの里抜けまでをやるというかなり厳しい詰め込み具合だったんですが、今回は更にひどかったというか、2部最初のナルトって結構・・・悩んだり悶々としたリするところが多いんですよね。で、細かいエピソードの中の微妙~な心の機微でナルトの優しさとか勇敢さとか普通さとか強さが私たちの心に刺さってくるんですけど、舞台はとにかく「機微」にあたる部分を端折るんですわ。我愛羅奪還編はそもそも我愛羅が出ない、サイ編はまじで端折りすぎて原作の余韻ゼロ(ギャグパートはしっかりやるのに)、暁も端折られ過ぎて原作のオドロオドロしさがない、1幕はこんな感じです。別に必要がないなら端折ってもいいと思うんですが、半端にやるんですよねどのエピソードも。だからナルトはなんかずっと悶々としてて、かっこいいことをとってつけたようにいい、いまいち見せ場がないまま話が進んでいってしまう。ナルト役の松岡くんってこんな感じだったっけ・・・?松岡くんはテニミュsecondで遠山金太郎役をやっていて、本当にものすごく巧かった印象があったので、見せ場がどこかわからないまま一幕が終わってしまって、すごく残念な気持ちになりました。
あと、今回のナルステはびっくりするほど前作と傾向を変えてきていて、何が顕著かってかなり歌の割合が大きいめちゃくちゃミュージカル仕様だったんですね。ほぼ全編歌では?というか・・・。私は2.5の舞台は全てミュージカルにしたほうがいいと思っている勢なのですが、それにしても前作とあまりに傾向が変わりすぎていたのでびっくりしたのと、うん・・・あんま、いい曲がなかったかな、というか・・・。これを何故リプライズする!?みたいな歌が多かったです。各々の目的を問い歌う歌とか。歌ウマな役者さんが物凄く多くて、それはとてもよかったです。ヤマト隊長が本当に歌がうまくて驚きました。あと綱手大蛇丸の三忍のうち二人が宝塚出身で歌も危なげなく、大変見ごたえがありましたね。
2幕は蛇の結成~サスケvsイタチ戦の結末までです。ここはサスケのパートとして話の筋が通ってるのですごくよかったし、イタチ役の良知さん、サスケ役の流司くん、そして蛇のメンバーそれぞれ、とても嵌り役で熱のこもった演技をされてました。サスケとイタチの愛が憎しみで憎しみが愛みたいな感情ドロドロぶつけまくる殺陣あり忍術ありのバトルは見ものです。流司くんは感情を篭めた歌い方がすごくうまいですね。心が震えました。
まあ、ちょっとデイダラ戦は蛇足だった気もしますが・・・。全編に言えることなんですけど、NARUTOは忍術があるのでかなり現実に再現するのが難しいんだと思うんですよ。それを試行錯誤でどうにかこうにかやろうとすると、忍術の演出に力を注ぎ過ぎて本編がおかしなことになるんですね。デイダラの粘土がバルーンで再現されたときは「お。おお~・・・」と思ってしまいました。しかも、もうナルステは我愛羅奪還をカットした実績があるわけじゃないですか。我愛羅をカットしてデイダラをやらなきゃいけない理由って何なんですかね。ちょっとわからないですね。
1幕はサイ役の北村君がすごくアクションも演技もよくて、まさにサイ!!って感じで見ごたえがありましたし、サクラちゃんは本当にかわいくてかわいくてほかの舞台でも見たい!!!って思いましたし、ヤマト隊長はかっこいいしイケメンだし歌がうまくて本当によかったです。ただナルトの見せ場がなさすぎるし、我愛羅戦カットするなら最早サイ編もいらなかったというか、1幕はサイだけにフォーカスするとかすればよかったと思います。ただ、もう、何より2幕が本当によかったので、2幕だけで1公演作ればよかったのでは?というか・・・。
初演のときも思ったんですが、NARUTOは大事なストーリーに入る前の移動してたいるときとか、ストーリーごとの幕間みたいなシーンがあるので、ちょっと難しいんですよね。しかもその幕間に大事なキーが落ちてたりする。それを全部詰め込もうとするとおかしいことになってしまうんですよね・・・。
最初からミュージカルにして、初演を7班結成~波の国まで、2作目を中忍試験~我愛羅戦まで、3作めを暁編~里抜けまで・・・とかっていうふうに徐々にやって真面目に歌も作っていければ、テニミュみたいな息の長い作品になれたんじゃないかな・・・と思います・・・てか、波の国はもっとできたと思うよ。ハクと再不斬の話超いいもん・・・。
なんというか、ジャンプの舞台は難しいなあ、と思った今日このころでした。BLEACHのミュージカルも2016年にやったのを見に行ったんですけど、脚本がめちゃくちゃすぎて頭痛を覚えたのを思い出してしまった・・・。(まあBLEACHは全編めちゃくちゃでした。NARUTOは2幕はよかったです)
2.5作品が乱立する今日ですが原作のデモンストレーションなら、もうやらなくてもいいんじゃないかなあ。やっぱり演劇として舞台にするなら、話に引き込んで最後に話から客を出さなきゃいけないと思うんですよ。今回みたいに1幕丸々使って「状況の説明」みたいになると、本当につまらないお話になってしまって残念です。
2.5は確かにキャラを見に行ってるんですが、原作を再現しようとしてあがいた挙句中途半端な完成度のものを見せられるのが一番困ります。努力が見えるだけに切ないというか・・・。

新生星組 宝塚歌劇団「スカーレットピンパーネル」を見てきたよ(ネタバレ)

スカーレットピンパーネル!!!名前だけは私でも聞いたことがある超有名ミュージカル!紅ゆずるさん・綺咲 愛里さんのトップお披露目公演でもあり、とっても楽しみにしておりました。例によって前情報を「フランス革命の話」程度しか仕入れずに行ったため、「最後死んじゃうんだっけ?」と同行した母に尋ねて「はあ????」と半ギレされました。死なないどころか超HAPPYな話でした。

自分としては極推しの宙組が喜劇「王妃の館」を演じたばかりだったので、なんとなくこう、金色の砂漠(オリジナル宝塚らしい悲劇)→グランドホテル(舶来だが宝塚らしからぬ悲劇)→王妃の館(オリジナル宝塚らしからぬ喜劇)→スカーレットピンパーネル、で正統派悲劇に戻るかな?という勝手な予想と覚悟をしていたのですが、まあ無意味な覚悟だったというか、有名な作品なんだから最低限勉強していけよという話です。

べつにいらないんですけど、一応粗筋を。

舞台はフランス革命直後のパリ。ロベスピエールの恐怖政治が続く中、フランス貴族の亡命を手助けする謎の義士「スカーレットピンパーネル」。ギロチンによる粛清を繰り返し、独裁を敷く革命政府が血眼になって探すスカーレットピンパーネルの正体は、イギリス貴族、パーシー・ブレイクニー。社交界の花形でお調子者の彼は、フランス一の歌手・マルグリットと恋愛結婚!ところが、二人の結婚式の夜にパーシーの協力者の伯爵が処刑されたという訃報が舞い込む。伯爵の居場所を革命政府に密告したマルグリットの手紙を見たパーシーは、新妻を置き去りにして古い友人たちを集め、自分の目的とスカーレット・ピンパーネルの正体を告げ、協力を求めた。スカーレットピンパーネルの目的は、ルイ・シャルルの救出!友とマルグリットの弟を協力者に得たパーシーはドーヴァー海峡を渡り、フランスへ向かう。

一方、置き去りにされたマルグリットは、パーシーの愛を疑いはじめていた。彼女はかつて革命派に属しており、そのころの恋人であったショーブランに自分の所属する劇団の存続と引き換えに伯爵の居場所を教えるよう脅されていたのだった。罪の意識がほぼないまま意味を分からず放置されるマルグリットと、マルグリットを疑いながらも彼女を心配し、守りたいがために遠ざけるパーシー。大体こんな背景に、マルグリットの昔の恋人でスカーレットピンパーネルの正体を追う革命政府のショーブランとの三角関係を交えつつ、ルイ・シャルルの救出を描く。紆余曲折ありますが、勿論最後はスカーレットピンパーネルの大活躍によってシャルル王子はイギリスへ亡命することになり、ショーブランは敗北してスカーレットピンパーネルの替え玉としてロベスピエールに送り返され、誤解の解けたパーシーとマルグリットは帰途船上で再び結婚式をあげ、スペシャルハッピーエンド!!!!!あなたこそ我が家!!!!!!

いやーーーーよかったですね。正統派ヒーローもの。

紅ゆずるさんのパーシーはとっても優しそうで、華やかで温かいお人柄でした。紅さんはこういう明るい役柄が合いますね。流石アドリブの女王という感じで、ハッピーエンドの喜劇ならではの面白い言い回しが盛りだくさん!お歌もよく通るあたたかいお声で、ほごらかに歌い上げていらっしゃいました。「ひとかけらの勇気」!紅さんにぴったりな歌で感動でしたね。パーシーの、本当は全部計算しているしすごく気づかいをしているんだけどそれを相手に気付かせず、軽率に振る舞って空気を和ませたり場を収めたりしようとするところは、なんだかとっても紅さんっぽい役だなあと思います。あと衣装!いかにもバカ貴族という感じの、フリルをふんだんにあしらったピンクの衣装がすごくお似合いでした。勿論ド派手な舞踏会用のシマウマスーツも素敵でしたよ。マルグリットはお話の都合上、バイタリティに溢れつつもちょっと足りないおばかちゃんなんですけど、なんか紅さんのパーシーはマルグリット好きになっちゃう気持ちわかる・・・っていう、包容力と軟派さを兼ね備えたところが私は好きでした。ルイ・シャルルに歌を教えるところと跪くところが特に好きなんです・・・。あと、結婚式でマルグリットの手をとってるところ。相手を慈しむように見つめる時の視線がとっても優しくて、心があったかくなりました!

マルグリットは、行動が先述したとおり結構頭からっぽちゃんなんですけど、綺咲さんのマルグリットはとにかく綺麗!!!そして気が強そう!!!でありながら、守ってやらなくては・・・!!!という線の細さがある、とても魅力的な女性でした。スカーレットポンパーネルの歌はどれも娘役パートが高すぎて殺人的だと思うのですが、不安定さはありつつも聞き苦しいところはなく、ラストに行くにつれて良くなる、情熱を感じさせる歌いぶりをされてましたね🌸ドレスも本当にどれも素敵で、よくお似合いです・・・。

礼真琴さんのショーブラン!歌いにくい低音ソングをものともしない圧倒的歌唱力と、マルグリットを自分の野心へ引き摺り込もうとする悪い男の魅力を存分に見せつけてくださいました!紅さんはわりかしユニセックスな魅力があると思うのですが、礼さんはザ・男役!!!正統派男役の血脈を感じる方ですねえ。とてもかっこよかったです。自分の出世欲と野望・野心のためなら魂も売るタイプの男なんですけど、案外マルグリットには本気だったようで、結婚するのか?とか、愛していたことはなかったのか、とか、そういう勝手な男の繊細さが見て取れるのも、とても、よかった~。

星組さんは雰囲気がとても華やかで、コーラスなどもみんなでお話しているみたいな歌い方をされるなあと思いました。「歌とダンスのまとまりで銀河を作る宙組」・「正統派宝塚嫡流花組」・「誰も見たこともない世界へ行く月組」・「氷上の美男美女トップを囲む雪組」・「賑やか花火大会星組」という感じです。一言でまとめると(まとめる意味あった?)

この星組公演でひとまずすべての現組を見られたのですが、作品もあると思うんですが、ほかの組に比べると凄くにぎやかですね。すごく楽しい舞台で、これからの活躍がとても楽しみです。新生星組、応援しております!!

それはそうと、「ひとかけらの勇気」、「あなたこそ我が家」がとてもいい曲すぎて惚れこんでしまい、早速音源を買ったんですが、視聴で東宝版の石丸さんの「ひとかけらの勇気」を聞いたら、すっかり東宝版にも行きたくなってしまいました・・・。(音源は明日海りおさん版を買いました(笑))東宝が原作路線で行くのか宝塚路線でいくのか、気になりますねえ・・・(*'▽')

髑髏城の七人season花 観劇記録(ネタバレ配慮無)

2017年度最も注目されてる舞台作品と言えるのではないか?『髑髏城の七人 season花』を観劇しました(2017.04.22)。日本初、そして世界で2番目に作られた客席が回転する劇場IHIステージアラウンド東京のこけら落とし、主催はTBS、チケット入手難易度が高いらしい劇団☆新感線公演、TVメディアでも露出度の高い小栗旬さんと山本耕史さんがメインキャスト。また、season花のあとにはキャスト総入れ替え・演出・脚本も変更しての鳥・風・月の上演が決まっているとか。テレビでもしょっちゅう特集されてますね。また芸能人の観劇率が高そうで、結構いろんな人が観劇報告ツイートを見ます。いつも自分が見ている舞台と規模が違い過ぎて頭がクラクラする…(だからなんだっていうんでもないんですけど)。

私は俄か観劇ファンなので劇団☆新感線は初めてだったんですけど、皆さんどんな感想だったんでしょうか・・・すごくダイナミックですごい作品だったんですが・・・私は・・・期待ほどではなかったな・・・。演出とキャストさんは本当に文句のつけようもなく最高で、心が震えるシーンは何度もありました。ただ脚本的にはまとまりに欠けるというか、この内容ほんとに世界で2番目に作られた最新エンタメ施設IHIステージアランド東京(収容人数1,300強)で上演するものなの!?!?どうなの!?!?皆どうでした!?!?!?!?わからない・・・事前の期待が高すぎたんですね。大体死ぬほど期待してるときは、自分の期待に裏切られているし・・・舞台刀剣乱舞のときもそうだったじゃないですか。

今回に限っては前情報がゼロだったのもよくなかった。「Chicago」(2015年宝塚OG公演)や「エリザベートー愛と死の輪舞ー」(2016年宝塚宙組公演)や「真田十勇士」(2016年日テレ主催)などで体験した前情報ゼロでいきなりぶん殴られる快感が忘れられず今回も全く何も知らずに行ったんですけど、今回は「髑髏城の七人」っていうタイトルでどうしても「七人の侍」をイメージしてしまっていたところがあったんですよね・・・。思ったものと違っていて、しかもあまり内容が刺さらなかったんですよね。多分、思っていたのと全然違うところがすごい魅力なんだと思うんですけどね。

総括感想はこのぐらいですが、以下印象に残った部分の感想です。(思いついたところを順不同に挙げていきます。)

 

◆無界屋蘭兵衛(山本耕史

すっごいかっこよかったです。美しかった。殺陣が巧い。どうもこの蘭兵衛という役は女性や結構若めの男性がやることが多いみたいなんですけど(まあ森蘭丸だものね)山本耕史さんはさすがの貫録があり、すごく落ち着いていて地に足がついている感じがしました。その落ち着きが『本能寺で死ねなかった森蘭丸』という存在の寂寥を感じさせて良かったです。初登場時、いきなり出てきて超長い口上述べるので前情報無しだと「誰だセリフ回しがしつこい男は・・・」となりがちなんですけどこういう存在自体がドラマチックでエモさの塊のようなキャラクター、大抵オタクは好きですね。好きでした。オタクの目から見て、彼は実質ヒロインでした。御着替えも一番ぐらいにあったかな。初登場時(薄緑の着物)→髑髏城単身殴り込み時(白の着物)→闇堕ち時(黒い着物)だったような気がします。また、蘭兵衛のためだけに作られたと思われるセットが一つありました。蘭兵衛が髑髏城に乗り込む際に通る白い花の花畑なんですが、ステージアラウンド東京は360度回転する劇場なので、作りおきのセットがいくつかあって普段は隠れてて使う場面ごとに回転して出て来るんですよね。で、大体どのセットも何回か使われてるんですけど、この花畑のセットはこの山本耕史が城に行くシーンでしか使われてなかった気がするんですよ(うろ覚えだけど)。

この人のパートは基本ずっとシリアスで美しいので納得感がありました。結局、信長公への忠誠だけが彼の生きる意味だったんだなあ、と。主君と死に別れ、太夫と築き上げた無界の里に生きる意味を見出してきたけれど、心の底にはずっと主君を無くした虚無が居座っていてそこから動けないままで、本心からは誰のことも愛せず、自壊していく。天魔王への加担の理由、罪悪感はかすかな一因に過ぎず、望んで堕ちたように見えます。あれだけ捨之助に止められたのに一人で髑髏城に行っちゃうんだもんな~。自分の正気と積み上げてきたものの重さを証明したかったのか、天魔王への罪悪感がそうさせたのか、それともぶっ壊れて全部台無しにしてしまうとしてもそれはそれでよかったのか、これ以外なのかこの全部なのか。

あと人との関係性としては、天魔王には甘いんですけど(口移しで毒飲ませるところ本当にチューしててびっくりした)その分捨之助との絆がちょっと薄くない?と思いました。まあ小姓仲間は天魔王だったんですもんね。太夫との関係についてですけど、あのまま無界屋に蘭兵衛がいたとしても、極楽太夫と一緒になるということはなかったんじゃないかな。中盤以降の森蘭丸の太夫への対応は正直ひどいというか、結局なんのとっかかりにもなれなかった太夫の立場がなさすぎるなと思います。そして無界屋の鏖殺、やりすぎでしょ・・・。家康公の殺害が目的であるとはいえ、あと森蘭丸として生き直すときにこれまで積み上げてきたものが邪魔になるのもよくわかるけど、あんな情緒ない撫で斬りじゃ「今までストレスたまってたんですね・・・」っていう感想になっちゃう・・・。

そして結構早く、しかもアッサリ死ぬんですね。無界屋を壊滅させて捨之助を洗脳したらもう用済みになっちゃう蘭兵衛。「髑髏城の七人」の「七人」が何を指すのかわからずにいるんですけど、もしクライマックスで白い光にシルエットだけ映った七人だったらこの人普通に含まれてないのでびっくりしました。

さて、ラストのカーテンコール、ステージアラウンド東京の回転式舞台をフルに利用して舞台のセットが回転して役者さんが出て来るんですけど、蘭兵衛さんだけが、先述の彼専用と思われる白い花畑の真ん中にたった一人、登場時の薄緑色の着物を身にまとって立って(背を向けて立ち、軽く客席を振り返って)いて、風が吹いて彼の長い黒髪が揺れるんです。これが伝説の美形に吹く風・・・!!!!と思いました。このシーンの美しさだけでチケット代の価値があると思うぐらい綺麗でした。心に焼き付いてます。そして、無界屋蘭兵衛の魂は最後まで誰とも交わらず、無界屋にも髑髏城にもなく、ひたすら孤独で美しかったんだなと思いました。

◆捨之助(小栗旬

いや勘弁してかっこいいわ。普通に好きになるかっこよさだわ。蘭兵衛が遠くから見ているしかない美しさだとしたら、捨之助は隣に行って世話を焼いてみたくなるような魅力のある男ですね。蘭兵衛と違って近寄りがたさみたいなものがないし、普通にひとなつっこいし、昔色々あったんだろうな~っていう感じはあるんですけど、結局自分に好意のある相手から強く出られると拒否しきれないような押しの弱さがすごくよかったです。あと、小栗旬さんって二次元ですね。山本耕史さんの蘭兵衛は「山本耕史さん演ずる無界屋蘭兵衛」なんですけど、小栗旬さんの捨之助は「小栗旬」という感じが全然なかったです。漫画みたいだなと思いました。小栗旬さんいろんな二次元映画とかで使われているイメージなんですが、そういう演技をする役者さんなんですかね。すごいなと思います。あとすごく殺陣が多いので大変そうでした。着流しで足を開いてることが多く、褌出まくってて色気が凄い。足が細い。沙霧とこれからどうなるのかわからないけど、デコボココンビで可愛くてとてもコミカルで良かったです。

人物としては正直、主役の割に掘り下げが甘くない・・・?と思いました。なんだろう、髑髏城に乗り込む、天魔王と戦う動機付けがいまいち印象に残らなかった・・・。かっこよさと人の良さだけが心に残ってます。

全部捨ててきたから捨之助、といいつつ情も思い出も捨てられてない感満載の彼ですが、そういうの銀魂の主人公にそういえばいたね。

◆沙霧(清野菜名

めちゃめちゃよかったです。perfectドリームヒロイン。そんなに沢山舞台見たことないけど、こんなに殺陣が巧い女の人は初めて見ました。子猿のような身軽さでひょいひょいっと広い舞台上を駆け回る。声の通りもすごくよくて台詞が聞きやすいし、小生意気かつ中性的な響きで清潔感がありました。ビジュアルもフレッシュで色気は全然ないんですけど透き通るような輝きと溌剌さがありました。なにより顔がめちゃくちゃカワイイ。なんというか、難点がない。清野さん、まだ若いんですね!これからがすごく楽しみな女優さんだなと思いました。捨之助とのコンビ、捨之助が結構色っぽいので逆にすごくこう・・・漫画的でよかったです。夢と希望が詰まってる。いつ捨之助を好きになったんだろう・・・と思わないでもないんですけど、案外最初から一目見てラブだったような感じもします。捨之助とくっつけるのかはわからないけど、なんとなくずっと元気でいて捨之助を現世に縛り付けて置くよすがにはなってくれそうだし、くっついたら幸せにしてくれそうなので、ラストも安心しました。

◆極楽太夫(りょう)

ビジュアルがめちゃくちゃ好きな極楽太夫。パンフレットでもずっとじっと凝視してしまうりょうさんの美しさ。和装がとにかく似合いますね。舞台もそんなに経験がないと聞いたんですけど、声も通るし力強いし演技もいいし、とてもきれいで目を引くし、すごくいいなあと思いました。

ただこれはキャラクター造形的になんですが、このビジュアルでこの性格なのか~~~と思ってしまったところがあります。パンフの極楽太夫、結構強そうな外見なんですけど、実際の極楽太夫は本当にめちゃくちゃ人柄が良い女性で、なんていうか、ただのいい人なんですよね。いい女、というか、善い人なんですよ。全然狡さとか毒気もないし、気風が良くて、一途で、かわいくて、みんなのお母さんみたいで、我儘なところもないし耐えがたきにも耐えるし、ヒロインにありがちな足手まといさもないし。

かわいいのはいいんですけど、毒気がないぶん信じきっていた蘭兵衛に無界屋を焼かれたときの悲惨さがすごかったし、蘭兵衛に何故だと問いかけるところの無力感、すさまじく痛々しい。あれだけ「綺麗な花には棘がある」ビジュアルにしたなら、なんかもう少し一矢報いれる強さがほしかったなと私などは思いました。まあ最後は幸せになったのでよし。

◆天魔王(成河)

寡聞にして成河さんの舞台を初めて見たんですけどめちゃくちゃいいですね。迸る狂気にぞっとするシーンが何度もありました。蘭兵衛を猫なで声で兄者ぁ・・・と呼びながら自分の傷跡は蘭丸のために出来たと言い、蘭兵衛の罪悪感を揺りに揺らして擦り寄っていくところは圧巻の気持ち悪さです。悪意の塊、妄執の鬼、という感じの非常にわかりやすいキャラクターで、一貫して自分の事しか考えておらず、用意周到なようでいて飽き性でなんでも捨ててしまえる悪魔気質、まさに理の通じないキチガイって感じがすごくいいなと思いました。納得感があるので好感度高いです。一番非現実的なようでいて、こういう人の不幸が蜜の味で悪意のためだけに生きてる人間、いますよね~。ただ、なんというか、最大の敵を屠る武器がアレでよかったん?と私は思ってしまうんだなあ・・・。

◆贋鉄斎(古田新太

この人が出てるシーンは全部笑ってた。というか、終盤は基本ずっと出てるのでずっと笑ってた。刀鍛冶なんですけど、ふざけた傷だらけの肉襦袢を着ていて、何かと思ったら剣が好きすぎて研いだ刀で自分の身体に傷をつけてしまうんですね。村正を「正子~!!!」大典太光世を「ミッチ~!!!!」と呼びながら自分の身体を痛めつける変態ぶりには爆笑でした。あと刀を研ぐために色々な道具を発明しているんですが、その制作過程で自転車を生み出してしまいその自転車で移動したりします。ズルいでしょ・・・。「風呂入ってそっこ~寝る計画♬」とか歌いながら自転車に乗って出て来るんですよ、戦国の世に・・・。あと攻撃は主に持ってる槌で人を殴ってくる。この人は捨之助が天魔王を打倒するための剣を作ってくれるんですけど、この人自身がギャグの申し子なので天魔王と捨之助のクライマックスもどことなく笑いが混じるようになってしまったのが個人的には残念でした。喜劇なら喜劇で、いいんですけど、なんというか、じゃあもう少し狭い劇場でもいいんじゃないかな・・・と思う。笑いをあの広い空間で共有するのは結構、客側の集中力がいるので。

◆兵庫(青木崇高

傾奇者を集めた不良集団の、お調子者のお頭。豪放磊落で気のいい性格ながら、実は農民の出で武士ではない。最後はその心根のまっすぐさで太夫を救ってくれたのでよかったです。ただね、ちょっとね、どうしようもなかったんでしょうが、結局子分全員死んじゃって、やっぱりそのあたりは不甲斐なかったな・・・というところです。そして彼は傾奇者を名乗る農民の設定なので、最後の戦いを鎌で戦うんですけど、控えめに言ってその様子はギャグ・・・ギャグなんですわ・・・子分全員死んでも、通ってた色里燃えても、ギャグなんだよね・・・。それは彼のせいなんじゃないけど、めっちゃ萎えるっていうか・・・なんでしょうね、兵庫さんの人柄に惹かれて集まって、みんなで傾奇者やってきた、その子分が全員死んじゃって、弔い合戦ってときに、農民丸出しのお兄ちゃんに渡された草刈りの鎌で農民ギャグチックに戦うってめっちゃ萎えませんかね。いや、鎌で戦ってもいいけど、もう少し余韻というか・・・たとえば、倒した敵を子分にするぐらいの、度量を見せるシーンがあっても良かったかな・・・。

◆その他

360度回転ステージは、本当にすごかったです。セットを出し入れしなくていいとあんなにスムーズに舞台が進むんですね。役者さんが歩いているシーンで客席も一緒に回っていると、ずっと視界の中心に役者さんがいて歩いてるのが見れて、当たり前なんですけどとっても「旅」の風情があり感動しました。風景がプロジェクションマッピング?で流れていったりするのも時が流れていくのを見ているようで臨場感に溢れていました。色んな舞台をここでやってほしいけど、まあお金超かかりそうだし、来年には取り壊されるらしいし、難しいだろうな。あと座席傾斜が緩いので舞台はあまり見やすくはない。めちゃくちゃ広くて遠いです。幅だけじゃなくて奥行きもすごくある。セットは山本耕史花畑事件からもわかるようにとにかく贅沢で、回せるからなんだろうけど、雨とか池とか全部本物の水を使うので凄くリアルですばらしい。雨の中であのクソハードな殺陣をやるのはかなり大変だろうな・・・と思います。ラストシーンは雨降ってるんですが、みんな必死そうでした。

あとは、設定面なんですが、舞台ってドラマとかよりもずっと安易でおおげさな設定がまかりとおるもんだと思うんですけど、なんかこう錯乱して味方を襲っちゃう酒(幻術)とかは、どうかな・・・って思った。あと刃を通さない鎧もちょっと難しいかな・・・。天魔王の強さみたいなものがそういうニッチな小道具に頼らないといけないもんなのかな・・・正直天魔王に「絶対に勝てない敵感」がないですね。まあそれが必要なのかはわからないですけどね。あと家康公の話をしてないんですけど、すごく殺陣うまくてびっくりしました。ただそんなに見せ場がないというか・・・。

総括ですが、劇場と金のかけ方、キャスティングはほんとに素晴らしかったです。あとキービジュアルも最高だと思います。ただちょっと細部と脚本がわたし好みではなかったかもしれません。劇団☆新感線は次回作に期待だよ!!!

舞台「乱歩奇譚」観劇記録

期待値★★☆☆☆

満足度★★★★★

刀ミュで北園涼くんにフォーリンラブして早2年。初主演の乱歩奇譚を見てきました。私はとにかく北園君は動いているところが魅力だと思うのでどっちかというと殺陣とかダンスとか諸々ある舞台に出てほしい!!!と思っていたのですが、そんなのどうでもよくなるぐらいかっこよかったしまあイケメンは立ってるだけ座ってるだけで世界平和っていうか・・・もともと乱歩奇譚のことは全然知らなくて、まあ見に行くから予習ぐらいのつもりでDアニメストアで5話までアニメ見てから行ったんですけど、(「フーンpsycho-passにどことなく似てるね・・・」っていう感想だったんですけど)舞台から帰ってきてアニメ続きを一気に視聴したらアニメに嵌ってしまい、漫画を買いノベライズを買いファンブックも買ったところで粗方開拓の余地がなくなり、今地獄の苦しみを味わっています。アケチくんに会いたいよ・・・

舞台の感想なんですけど、とっても丁寧に作ってある2.5舞台ですごく良かった。俄かでも楽しめるきちんとした脚本があり、きちんとキャラ造形された登場人物、演出やセットもスマートでかっこよかったです。雰囲気は原作に忠実でありつつ舞台オリジナル脚本絶妙に2.5次元ぽくないというか・・・背景のセットがずっと固定で動かないところなんかには、小劇場の演劇っぽさがあって面白いなあと思いました。劇団の方が出演されていたみたいで、コバヤシくんが「アニメまんま」なのに脇を固めてる役者さんたちのアニメっぽくなさがリアルで、2次元と3次元の間を楽しめる舞台でした。

あとシアターサンモール、初めて行ったんですけどほぼ乱歩奇譚じゃん。

基本はアニメの1~2話の人間椅子事件がメイン。1幕は内容的にはアニメと大差ないかと。2幕では、アニメでは取り上げられなかった人間椅子事件に関わったコバヤシくんの同級生をメインに、舞台オリキャラのミシマさんが起こそうとした事件の顛末が描かれます。そこにちょいちょいアケチくんとナミコシくんの関係が意味深にチラつく・・・という構成。アニメを最後まで見ていなかった私は見終わって、「えっナミコシくんって誰!?めっちゃ気になる」と思ったんですが、初めから2話の上演がある程度見越されていたっぽい内容でした。(原作と「ナミコシくんとアケチくんの関係」が変わっているみたいですね?同じ孤児院で育ったというようなことを舞台で言っていたような・・・。あとアケチくんもヤタガラスに保護されて育てられてずっと特定未成年として生きてきたような口ぶりだったな?)

トーリー、アニメ小説漫画それぞれ見ましたが、一番救いのある結末だったのは舞台でしたね。ジャンルの雰囲気にあってると思った結末は小説版なんですけど、生々しくなりがちな舞台だからこそウツミさんとホシノさんにそれぞれ救いがあってよかったです。あとノロちゃん可愛かった。

一番良かったシーンはホシノさんが先生を殺すシーン。きちんと描写がされてるのはメディアミックスの中でも舞台だけだと思うのですが、迫力があってとても引き込まれました。先生は「孤島の鬼」の諸戸さんっぽい美しいものに目がないさわやかサイコパス系美青年で殺されても仕方ない感じなんですが、座ってほごらかに「もう君を愛していないから椅子にできない」というようなことをいう先生に背後から抱きついて、その首筋に指を這わすホシノさん、凄艶。微笑んで、白いホシノさんの指に触れる先生。ホシノさんの手に握られた紐。紐を引くホシノさん。そのまま紐で絞殺される先生。後ろ向きに引き摺り倒される先生。糸鋸を持ち出すホシノさん。先生の首をギコギコするホシノさん。最愛の先生を椅子にする過程で段々感情が抑えられなるするホシノさん。やってることは猟奇殺人なんですけど、美しい場面でした。バックに流れていたアニメEDのミカヅキ、「夜明け夢見ては地べた這いずりまわってる それでも誰かに気付いてほしくて」まんま歌詞がホシノさんの願いそのもので辛い。

あとノイタミナ枠らしいキャラのハナビシ先生とミナミさんがすごくかわいかったなあ。カガミとハシバはイケメンでした。ナカムラさんと影男は本物だった。影男はすごくギャグセンが高い。北園アケチくんは影男が好きそうでかわいかったです。

コバヤシ少年はめちゃくちゃこだわって作ったんだろうな・・・というパーフェクト再現度というか 本当にすばらしかったです。現役の売れっ子声優さんなだけあって、声の演技がすごくって、顔を見ていなくてもどんな顔をしているかわかるし、声に視線を引き寄せられてしまうことが何度もありました。次回作も楽しみです。

お目当ての北園アケチくんですが、めちゃめちゃ好きでした。かっこよくてスタイリッシュでお兄ちゃん気質で、北園くんにあっていた役だったと思います。ただ、一番アニメと違うのがアケチくんだったなと思います。アニメのアケチくんて子供でオタクなんですよね。(とはいえ根はとても優しい子だと思うのですが)子供なので特有のとんがり方をしているんですが、北園アケチくんはそういうことなかったですね。大人。あとオタクじゃなさそう。まあ物語序盤がメインの話で舞台がコバヤシくん視点で続くので余計アケチが大人びて見えるというのもあると思うんですけど、とにかく舞台のアケチくんは結構自分から色々なことを喋ってくれたりとか、すごく優しいお兄さんになっていて、中の人の人柄とうまく混じってかっこよかったです。あと悪態をついたり文句を言ったりするときの演技がとても自然でカッコイイです。「靴脱げよ!」が好き。あと散々言われてましたが足がとにかく長い。腰パンなのに・・・。

そんなわけで大満足だった乱歩奇譚。続編も決まり、これからが楽しみなコンテンツのひとつになりました♡次回作も楽しみにしてます!アニメも二期やってくれ!!

 

ミュージカル刀剣乱舞「阿津賀志山異聞」脚本構造読み※強烈なネタバレ注意

 

脳味噌が気持ちいい、ミュージカル刀剣乱舞脚本

刀ミュ脚本って観劇後切ないけれど空が晴れ渡るような感じがします。脳みそが気持ちいい。2015年秋のあのストーリーも何もなかった時期によくこんな脚本書いてきたな。歴史上の人物を史実として出す勇気。そして原作に無い(歴史)をもとにキャラクターを葛藤させる冒険心。審神者も出す屈強さ。すごい。その溢れる冒険活劇への熱意を称えたい。好きすぎてどうにかなりそう。好きなんだけど他所の本丸なので二次創作・・・というのでもなく、ひたすら好きでいるしかないけどチケットもないし観劇もできないし配信もDVDも擦り切れるほど見ているので無謀とは思いつつ構造読みをしてみました。国語かよ。脚本の勉強をしたわけじゃないので全然わからないしネットで拾った画像とウィキペディアを参照して作成しましたが愛だけは溢れています。

◎阿津賀志山異聞構造読みしてみた

 第一幕

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 第二幕前半

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第二幕後半

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第三幕

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以上!

◎登場刀剣男士

主演:加州清光

主演:今剣

準主演:岩融

助演:石切丸

助演:三日月宗近

助演:小狐丸

こんな感じですかね。用意されてる場所は2つあって、①本丸 ②歴史上の時間軸上。主役を定めるのも無粋ですが、加州と今剣がW主演って感じでいいのかな。①本丸パートの主役が加州で、②歴史上の時間軸の主役が今剣と岩融でしょうか。

 

◆基本のストーリー

①加州清光の隊長任命

②隊をまとめられない加州・岩融の葛藤・今剣の出奔

③岩融との対話を通して学び、石切丸の信頼を得、隊長として隊を率いる加州

④岩融との対話で今剣の問題が解決

⑤加州清光の任務達成

◆ストーリー上を走るエピソード

1.加州清光:人の心を持つ「物」、「刀剣男士」である加州清光の成長物語

2.今剣:逸話の中の「刀」としても役割と「刀剣男士」としての使命の間の葛藤の物語

3.岩融:「刀剣男士」としての使命を持ちながら、前の主との邂逅を果たし、「人の心」を学び受け入れ、仲間を救う救済の物語

4.石切丸:「人に望まれた刀」としての役割と「戦う刀剣男士」としての使命の間の葛藤の物語→加州に指摘されたことで自己の内包する「矛盾」を自覚した石切丸は、止めなければ加州が深堀したであろう会話を強引に打ち切って自らのエピソードを止めている。

三百年の子守唄への布石?

 

1.加州清光の成長物語

 さて、加州の話って、見ていてめちゃめちゃ脳みそが気持ちよくないですか?なんでだろう、と思っていたんですが、場面分けしてみてみると彼はすごく成長がわかりやすいキャラなんですね。常に前進している。素直さは美徳。

加州の登場シーンにフォーカスしてみていきましょう。

 

①加州清光の課題の提示

初めに隊長に任命され、喜ぶ加州くんに課題が提示されます。

「隊長として皆をまとめ、任務を達成する」

これが加州くんの課題です。加州くんは「厄介なことになっちゃったな」と思いながらセットアップが終わります。

②加州清光の課題解決のための試練の提示

次の登場シーンでは厄介な三条派を集合させるところから始まります。予想通り全然誰も言うこときかない。本当に大丈夫かなあこの編成で・・・と思う加州くん。ちなみにこのなかなか来ない三条派、三日月→小狐丸→岩融・今剣→石切丸の順でやってくるんですが、加州の課題になる人順で加州のところに来てますね。三日月は加州とはほぼ劇中でかかわりがなく、一番加州に優しいです。

③試練との対峙(直面)

さて第一部隊が出陣します。やってきたのは厚樫山。現われる時間遡行軍。ここでは出陣が済んでいて本当の戦場です。なのに加州くんはここでも命令を無視されます。誰も加州くんのいうことを聞きません。岩融の独断専行を許し、なし崩しで命令を変更する加州。「本当に大丈夫かなあこの編成で」が全然大丈夫じゃなかったことがわかります。不安の的中です。テンポがいいですね。

④加州清光の挫折(任務の不達成)

次の場面、敵を撃退しいい気分の加州くんです。ざっとこんなもんかな、という台詞には命令無視をされた辛さなど微塵も出てなくて素直でほんとかわいいなと思います。ところがそんないい気分も束の間、禍々しい気配がして、死んでいるはずの義経が出てくる。今剣が義経についていこうとする。ここから加州自身の資質と課題が明らかになります。場は混乱していますが、加州くんは取り敢えず戦うことする。史実が変わっているらしく何が何だかわからない、今剣は混乱している、敵の強さも未知数で簡単には勝てそうにない、この状況下で脇目も振らず猪突猛進する加州くん。今剣を心配して撤退を進言する石切丸の言を跳ねのけてしまいます。興奮状態の今剣は攻撃を受け軽傷。さらに撤退を求める石切丸。聞き入れない加州くん。見かねた三日月が撤退を提案し、小狐丸もそれに追従。年長二人に諌められたうえ流石に分が悪い空気になってきた加州くんはしぶしぶ撤退を宣言します。この撤退シーンですが、三日月は「ここは一度引いた方がいいと思うが・・・」と命令ではなくかなり控えめに提案をしています。三日月の演技の中でもかなりすきな部分なんですが、語尾がイイ感じに消える控えめさがあるんですね。言いきることの多い役なので目立ちます。マイペースじじいと見せかけて、三日月が一番加州を隊長としてたてているのです。

⑤加州清光の葛藤(仲間との衝突)

さて次の場面。加州くんは主への報告を終え、小狐丸、石切丸が座っている魔の座敷に気まずそうに躊躇いつつ入っていって座ります。

小狐丸は優しいので気まずい加州くんがしゃべりやすいように質問をしてくれます。加州くんは気まずさを吹き飛ばすように不自然に明るく主の話をするんですが、石切丸は加州の話をぶち切って「なんで撤退しなかったんだ」攻撃を繰り出します。冷静に話をしようと努める加州くんですが、石切丸の「すぐに撤退すべきだった」という断定台詞を聞き、ちょっとイラついたふうで軽傷ぐらいで撤退してたら任務を遂行できない、というわりかしまっとうとも思われる主張をします。石切丸は冷たく「隊長の君がそんな闇雲な戦い方をしていたのでは命がいくつあってもたりないな」とあからさまな嫌味を飛ばすのでついに激高し「刃が折れても、隊長が死んでも前進する。それが新選組の戦い方だ!」と言い返してしまいます。すかさず「ここは新撰組ではない。」と言い返され、挙句の果てに今剣が怪我をしたのはお前のせいだぞ的なことまで言われます。このシーン、小狐丸は何も言わずにいるんですけど、あのときどう思ってたんでしょうね。いつも結構顰め面をしていて、「子供相手にそこまで言うこともなかろうに・・・」と思ってそうだなと私は思った。石切丸に熨された加州くんは小狐丸に「自分と石切丸のどちらが正しいか」と尋ねますが、小狐丸は「答えは自分で導き出すものですよ」と言って去ってしまいます。

⑥加州清光の問題解決のための気付き

さて次の場面は加州君の課題達成のためのキーが明らかになります。今剣の出奔を岩融に告げる加州くん。岩融は激情にかられて大声をあげますが、すぐに冷静になり加州に心情を吐露します。「『肉体』の思う通りにならなさ」を語る岩融に、「肉体を得ることによって矛盾(心)が生まれるらしい」と話す加州。これは岩融が新刀剣男士だという設定が生きてる場面ですね。「心や感情は難しい」という岩融に同意する加州くん。岩融は大人なので仏教用語を持ち出して「物事は様々な因縁によって成り立っている」ことを話し、加州はそれを聞いて「どちらかが正しくてどちらかが間違っているわけではない」ということを知ります。見てると普通に流せるけど会話の流れがちょっと強引な箇所にも感じられますね。ただ加州くんは気まずさからみて石切丸の「撤退」の正しさもよくわかっていて、そのうえで進軍しようという自分の判断を曲げられなかったのですね。だから小狐丸に「どっちが正しいか」と尋ねたわけです。「どっちが正しいか」を念頭に置いたうえで岩融の話を聞いていると、確かにそういう方向になるかも。

全てを受け入れていくしかない、という岩融に、そうか、そうだよなあと嘆息する加州くん。石切丸とのイザコザ解決の糸口を得ます。さらに自分の不甲斐なさを言う岩融に、「仲間なんだし、一人で行くのはやめてくれ」と、隊長らしい言葉をかけられた加州くん。成長してますね。素晴らしい。

⑦加州清光の克服

さて再び出陣する第一部隊。加州くんは作戦を提案します。ここでは三条はひとまず加州のいうことをきいてくれます。ただし石切丸は作戦に反対し、加州の作戦は通らない。焦れる岩融は抜け道がないか探しに行く、と言って離脱します。それに追従する三日月。三日月が何故そんなことをするのかわからない加州に、小狐丸が「三日月は岩融を気遣っている」と説明してくれます。自分の隊長としての未熟さを自覚し恥じる加州を見て微笑む小狐丸。彼も大人なので石切丸と加州くんを置いて席を外してくれます。ここから課題解決の場面ですね。石切丸に対峙する加州くん。「隊長(刀剣男士)として正しい選択をしたが、仲間(人)としては間違っていたのかもしれない」という結論を出す加州くん。それを聞いた石切丸は「自分はあまり戦は好きでない」と語り出します。

 ★矛盾という名の蕾

 石切丸がディズニープリンセスになることに定評のあるこの曲。

石切丸は今剣にかなり同情的というか、一種自己投影しているのかなという感じがします。人の願いを聞いていた身として、戦いたくないけれど戦うしかない石切丸。守り刀でありながら義経を殺さねばならない今剣。

★「君にも身に覚えがあるのでは?」という石切丸の台詞

トライアルでは、

「刀の多くは命のやり取りを経てここにいるので心に矛盾を抱えている者も多い。」

「加州清光、君にも身に覚えがあるのでは?」

という会話になるのですが、

阿津賀志山異聞では

「みんなそれぞれ命のやり取りを経てここにいる」

「加州清光、君にも身に覚えがあるのでは?」

となっていますね。これは歌の流れがしょうがなかったのか、それとも加州清光が矛盾のない刀なのかどっちなのかですけど、加州くんも矛盾はあるのでなあ。そして阿津賀志山異聞の「みんなそれぞれ命のやり取りを経てここにいる」の「みんな」に加州が含まれてないのも変ですよね。だって加州は戦刀だものね。

 さて石切丸との今剣についての会話を通じて、石切丸自身の矛盾に気付く加州くん。「あんたも大きな矛盾を抱えていたんだね」という台詞によって石切丸の心に寄り添います。もっと話したそうな加州君ですが、石切丸は突然その会話を打ち切って作戦を提案。加州くんは一瞬肩透かしを食らったような顔をしますが石切丸の提案を聞いて喜び、二人で正面突破を目指します。

それを見て微笑む小狐丸。いいやつ。自分が出したなぞかけが解決していることを示します。

⑧加州清光の試練達成

次の場面では石切丸との共闘やひとまずの作戦の成功などが描かれ、加州が隊長として立派に役目を果たしたことが示されます。加州の課題はほぼこれで終了ですね。

あとは今剣を諌めるシーンもありますが、今剣を諌めるのは加州の言葉にヒントを得た岩融の仕事なので省略。

⑨加州清光の課題達成

全ての戦いが終わったのち、加州清光は審神者に隊長として任務の報告をします。審神者は「貴方は隊長として見事役割を果たしました」と評価し、加州の課題「隊長として皆をまとめ、任務を達成する」はコンプリートされ、物語が終わるのです。

すごいですね、こう書いてみると加州のシーンは無駄なところがないです。課題提示→問題発生→挫折・対立→克服・和解→大団円と流れていてそれはストレスフリーにもなるなあ。加州は行動が一貫しているので見ていて気持ちいキャラだなあと思いました。かわいいし。さとうりゅうじくんうまいし。

 

2.今剣:逸話の中の「刀」としても役割と「刀剣男士」としての役割の間の葛藤の物語

 今剣の物語は刀剣乱舞でも一番デリケートな「史実」「元の主」と「刀剣男士」の葛藤を描いている物語で、作中のテーマの根幹を担っています。加州くんのパートで好きなシーンというと私は「本当に大丈夫かなあ、この編成で・・・」というシーンが可愛くて好きなんですけど、今剣の好きなシーンは「ぼくにむずかしいことばかりいわないで」というところと、「ぼくのやくわりはなんだろう?」っていうシーンなんですね。要するに加州のエピソードと話の重さが全然違う。義経公の兄への思いを聞き、「だいじなのはやくわりなんですね」、「ぼくのやくわりはなんだろう」という今剣。これ本当に神な流れだと思いませんか・・・。今剣の役割は義経公を殺すことなんですよ・・・。史実でも、刀剣男士としての今でも。

 

さて次は今剣の動きにフォーカスしてストーリーを追います。さっき加州のストーリーはストレスフリーだと言いましたが、今剣も別にストレスがたまる構造ではなく常に前進はしています。ただ本当に、本当にかわいそうなだけなんだ・・・。

①今剣の過去

 今剣の物語はオープニングに暗示されます。今剣という刀剣男士の存在は出てきませんが、義経の自害のシーンで短刀(今剣とは拵えが違うようですが)が義経に「これはなに?」と語りかける。迷子の子供の様に呆然とした響き。義経自害の現実を受け入れられない様子が描かれます。

②今剣の過去へのトラウマの提示

 提示としてしまったんですが、ここは今剣が自分の持つ矛盾に引き摺り込まれていく導入部分ですね。ようやくやってきた岩融と楽しい日々を過ごす今剣の前に、突然「阿津賀志山への出陣」が言い渡され、①で暗示された今剣のトラウマが蘇ります。心配する岩融に「ぼくはだいじょうぶですよ」と返す今剣ですが・・・。

③今剣の役割の示唆

 さて、出陣した今剣と岩融には原作の回想があります。ここで「歴史を変えては何故いけないの?」「悲しいことがあっても、その先に我らがいるからだ」「むずかしいよ」の掛け合いがあります。原作の台詞で、今剣の刀剣男士としての役割の自覚に欠ける性質が窺えます。

③今剣の希望:義経についていくこと

 義経公との邂逅です。今剣の自己矛盾の根源である義経公との出会いのシーンですね。今剣はここで自分のやりたいことを作中に示します。義経についていきたいのが今剣という刀にのです。今剣は義経の元へ駆け寄ろうとしますが、仲間に阻まれてしまいます。意外と石切丸が一番に止めているのが印象的ですね。石切丸は多分最初から今剣を気遣っていたのでしょう。混乱状態の中軽傷を負い、加州の宣言で撤退します。

④理解者との衝突

 ★きらきら

「きっとどこかであの星をニコニコ見ている人がいる」というのは義経公のことだろうなあ。今剣は義経公が生きていたことを無邪気に喜んでいます。今剣は刀剣男士としての自覚はないキャラクターだということが示されます。今剣は義経公の守り刀なのです。今の役割や今の主への興味関心等は描かれません。嬉しそうな今剣の前に、岩融が現れます。「こんなにうれしいことがありますか?」という今剣にはじめは肯定していた岩融ですが、途中で「戦の時は戦に集中しなければ」「もしなにかあったら」と説教を始めます。今剣は笑って聞き入れず、義経公に会いに行きましょうと提案し、岩融は今剣をすごい剣幕で諌めてしまう。「我らの使命は歴史の流れを守ること」と説く岩融に、今剣はショックを受けた様子で「ぼくにむずかしいことばかりいわないで」と言い残してその場を去ってしまいます。

⑤今剣の希望の成就

義経と今剣が人として出会うシーンですね。今剣は義経の元へ行き、義経が願ったであろう兄弟の和解のために動きます。今剣の行動によって義経は頼朝の殺害を思いとどまることができ、今剣は義経に従えられてついていくことになります。

⑤今剣の課題の提示

義経の一行に加わった今剣は、弁慶と仲良くなります。弁慶に「義経に似ている」と言われ喜ぶ今剣、そして弁慶が岩融に似ているという会話。岩融との和解、そして今剣が岩融を完全に忘れてしまっているわけではないことが示されています。平和なシーンなんですが哀愁がありますよね。私はこの今剣の弁慶や義経とのかかわりのシーンすごく好きです。

弁慶がはけて義経公が出てきます。義経に質問をする今剣。ずっとききたいとおもっていた「何故頼朝と戦おうとしなかったのか」を義経に問いかけます。義経公は始めはぎくりとするものの、それでも真摯に今剣の質問に答えてくれます。国を治めることについては兄の方に才能があるという義経。「人には役割」があることを今剣に伝えます。今剣はよく理解できないけれど、「たいせつなのはやくわりなんですね」と復唱します。

「ぼくのやくわりはなんだろう」

と言ってかけだしていく今剣。観客はみんな今剣の役割をわかっているのです。身を引き裂かれるように辛かった・・・。

⑥今剣の試練

次の今剣の登場シーンは義経公の死後です。その時点で辛すぎる。義経という人格はもうなくなってしまってることに気付かない今剣は、義経のもとにやってきた仲間たちに「義経公の家来になりましょう」と誘います。ここは全く揺らがない刀剣男士。今剣は追い詰められて仲間に刃をむけます。「俺たちは刀剣男士なんだ!」という理屈を説く加州の声は全く届きません。

★おぼえている

「ぼくは義経公の守り刀」という歌詞があります。ここはトライアルだとそのままですね。これが今剣の選びたかった自分の役割。岩融と対峙し、どけと言われて怯む今剣は、それでもいやだと言ってそれを拒否します。守り刀でありながら義経を殺さなければならなかった、あのだいすきな元の主の血を浴びた刀としての役割を持つ自分。「史実」を変えたいという今剣の切実な思いがここで吐露されます。

岩融はその悲痛な声をきいて「お前は何も悪くない」と言って今剣を慰めます。

この超緊迫した場面で「お前は何も悪くない」という圧倒的な感情論を持ってくる岩融、痺れます。今まで今剣への説得は全て「お前の役割は刀剣男士として歴史の流れを守る事だ」という論調に終始しているんですが、役目そのものを拒否している今剣には一つも響いていません。ここで初めて岩融が今剣の気持ちに寄り添って「お前は悪くない」と語りかけることで、今剣はようやく自分のトラウマという肩の荷を少しだけ下ろすことができたんですね。実際、岩融の感情論は正直何の解決にもなりません。自分が悪くなかったら義経公が死んでもいいのか?ということで、全然よくないんですけど、「お前は悪くない」ということが彼らに与えられた最後の救済なんですよね。刀剣男士は選択肢を持っているように見せかけて実ははじめから何もないんですよ。歴史の流れを守ることをやめていいという選択肢はない。嫌でもなんでもやるしかないのです。そして再三それを語られ続けていた今剣も、本当は自分の役目をわかっていたのではないでしょうか。

⑦役目を果たす今剣

 さて材料が揃いましたね。岩融との和解を経て今剣は義経公と対峙します。義経公が弁慶を斬ったことで、最早彼が義経公その人でなくなっていることを悟る今剣。「あなたは義経公じゃない!」として今剣は義経を岩融と力を合わせて倒します。大団円、ですが、このシーンは今剣が刀剣男士としての役割を受け入れられたシーンではないんだなあ。「義経じゃない」から斬ったわけだし。

⑧役割を得る今剣

 義経公の守り刀としての役割を失い、刀剣男士としての役割もうまくうけとめられないまま、寄る辺のなく立っている今剣を、岩融が肩にかつぎます。「のちの世も、またのちの世も我とともにあることを」岩融は義経の辞世の句を引きながら、「今剣の傍にいることが自分の役割で、自分の傍にあることがお前の役割だ」と言って今剣の心に寄り添い慰めます。人間最後は感情なんだなあ、と私は思う。

今剣は岩融に与えられた自分の役割に納得し、はい、と言って笑います。

これで今剣の役割が新たに設定され、今剣の物語は終わるわけです。

大団円ですね!!!!!すごくいいシーンで大好きです。岩融役のさえきだいちくんの背中が凄いよい。(台無しだよ)

 今剣の物語は、加州のように単純な意識の変化や成長はありません。そのぶん「刀剣男士」としての役割と「人」としての心や情をもった存在であることへの矛盾とそのどうしようもなさが描かれています。これのどうしようもなさこそが「刀剣乱舞」の醍醐味ですよね・・・。

 

3.岩融:「刀剣男士」としての使命を持ちながら、前の主との邂逅を果たし、「人の心」を学び受け入れ、仲間を救う救済の物語

さて、岩融のストーリーですね。岩融はこの話だとめちゃくちゃいい役ですよね。ある程度達観した大人でありつつ、元の主を懐かしむ哀愁もありつつ、仲間の為に悩む姿はとてもかっこいいです。ここまでが長すぎるので岩融の部分は省略するんですが、岩融は加州清光の成長の物語と今剣の矛盾の物語をつなぐパイプの役割をしていますね。加州は隊長でありながら今剣とほとんど関わっていないんですけど、成長した加州との対話によって成長した岩融が今剣を救うことで隊全体に影響を及ぼしている加州を描くことができています。

岩融は準主演と書きましたが初めからある程度の答えは持ったうえで与えられた課題に臨んでいますね。弁慶との対峙もとまどいつつきちんと弁えています。序盤での弁慶との対峙で微かに感じさせた躊躇いを、後半では三日月との対話をへて自分の役割そ再認識し、吹っ切って弁慶と対峙しています。(実は三日月宗近は何も言ってないんですけどね。)

岩融は今剣が自分の説教を受け入れなかった理由の理解も非常に早いです。頭がイイ、とにかく。

岩融のストーリーは岩融の理解力と吹っ切り力があまりに高いのでいつもポンポン進んでいるし、最後は今剣とともにあるという自分なりの役割を見つけだし、今剣の物語と自分の物語に大団円を齎します。尚私が刀ミュで一番好きな台詞は岩融の「かつての主が強くてな!!!!」です。あー、最高・・・やっぱり主役は彼なのかも・・・。

みなさんも刀ミュでおすすめの台詞あったら教えてください。

 

◆助演の見事さ:三日月宗近と小狐丸について

刀ミュの脚本に共通する点なんですが、「ストーリーの主軸にほぼかかわらないサポートキャラ」が必ずいて、そのキャラは「例外なくめちゃくちゃハチャメチャに魅力的」だという話です。幕末天狼傳での堀川国広と和泉守兼定や、三百年の子守唄のにっかり青江のように。彼らは一貫して葛藤せず、物語が上手く動くように潤滑剤としての役割をこなしつつ、悩める小羊を見守ります。ここは刀ミュのすごくいいところだと思うんですけど、作中で克服できない悪印象なら作中に引用しない。キャラの株を下げない、そういう脚本作りをしているなと私は思います。たとえば堀川や和泉守なら、前の主である土方さんを前にしたら回想の件もあるしもっと動揺したり葛藤したりしそうじゃないですか?でも幕末の主役は「安定」と「長曽祢」と「蜂須賀」だったので、堀川や和泉守は自分の泣き所については徹底して言及しません。不用意に「前の主」との絡みを出すことで、サポートキャラに不安定な印象を与えるのをよしとしない。

阿津賀志山もここまであらすじを書くと、小狐丸と三日月の話はほぼほぼ出てこないですね。三日月は岩融のサポートキャラなのに岩融のパートを省略してしまったばっかりに出番がほぼ皆無となりました。この二人は徹底してサポートに回る大人の役なので物語の主筋に絡んで葛藤したり答えを出したりはしません。その姿はめちゃめちゃかっこいい。

阿津賀志パンフの対談に、小狐丸はセクシーな役、というフレーズがあるんですが、まさにそれ、役者ってみんな天才なのかな?と私は思った。小狐丸は全体を見渡している大人で、とてもセクシーなんですよ。大好きです。推しです。三日月も作品の顔としての立ち位置は守りつつちょっとお茶目な面もありつつ、岩融や加州に対し細やかな気遣いをしていてすっごいかっこいいですね。

◎何も言わない三日月宗近

この本丸の三日月宗近はハイパー脳筋だなと私は思います。考えるよりやり合うほうが性に合っているのでしょうね。岩融に発破をかけるシーンを見てみると、岩融に自分から喋らせているだけで、三日月は何も言わない。印象的な「俺は言葉は信じぬ性質でな」という台詞も語感ほど示唆に富んでません。多分言葉で語りかけるより殴り合った方がすっきりするから取り敢えず斬りかかったよそんな警戒しなくていいよ。ぐらいの意味かなという気がします。文脈が取れないし。仕合を通じて口が解れた岩融は自分の葛藤をするする言語化し、三日月は唐突に舞います。

この返歌も、実は何も言ってない歌詞ですね。本当に何も言ってないので驚きます。清々しいほど・・・。ただ天下五剣いち美しい三日月の舞に感ずるところがあったのか、岩融は三日月に何かを語りかけようとするのです。しかし三日月は「自分の好きにしろ」とやさしく言ってその場を去ってしまうんです。うーんセクシーだな三日月宗近

◎ほかにも歴史上の人物が魅力的過ぎて義経役のアラケンさんに嵌ったとかいろいろあるんですが、長くなりすぎているので省略。

総括:

岩融の台詞に「すべてを受け入れていくしかない」というのがありますが、刀ミュのシリーズを貫く精神はこれだと思います。「受け入れていくしかない」。阿津賀志山のパンフレットで今剣役のおおひらしゅんやくんも言っていましたが、序盤の「史実」の時点で物語は終わっていてどうしようもないのです。そしてそのどうしようもないことを理屈ではなく心の交流を通じてなんとか割り切り、役目の為に前へ進む。与えられた役目をどうすることもできないが、今剣に「お前は何も悪くない」といい、「自分の傍にあることが今剣の役割」だと言いきった岩融。葛藤を抱える石切丸に「あんたの気持ちがわかる」という加州清光。幕末では非情な現実に直面する長曽祢に蜂須賀が「もう見なくていい」と言い、三百年では青江が石切丸に「一緒に笑うことぐらいはできる」と語りかけます。

「望むものを選ぶことが出来なくても、「人」の心に救われることはできる」それがミュージカル刀剣乱舞すべての作品に共通するテーマであると思います。

初めに設定された主人公のストリーにあわせて作中の登場人物のエピソードを交差させ、全員が大団円にむけて走り抜けていく脚本構成は、本当にわくわくするしすっきりするし、なによりとても感動します。これを書きながら「刀ミュ大好きだなあ」という気持ちがもりもりわいてきました。

課題は細部が雑なところですね。会話と会話の継ぎ目もそうですが、描きたいテーマが先行して丁寧さに欠ける部分が散見されます。阿津賀山異聞は特に。あと幕末でもあるんですが「敵の狙いがすぐ判明しすぎ問題」なども見られます。そして任務や敵が派手すぎるというのもまあ見る人にとっては眉を顰める原因になるかもしれません。

でもそんなことは些細なことです。ミュージカル刀剣乱舞には、「至るべき大団円と、描きたいテーマ」という圧倒的な力があるのです。これがある2.5次元舞台は実はとても少ない。刀ミュはこれまでにない2.5次元を目指しているようですが、それを飾るのにふさわしい脚本であると思います。

是非これからも躍進して、東京ドームで公演してください。2017年もらぶフェスやってください!!!!!