うつくしきもの

観劇ブログ

ミュージカル刀剣乱舞が最高だという話

こんにちは。ミュージカル刀剣乱舞のファンです。皆さん、三百年の子守唄はご観劇になりましたでしょうか。控えめに言って最高としか言いようのない出来栄えでしたね。1作2作とガラっと作風を変えてきたところがすごい。シリーズ全体としても物語に幅が出たように思われます。こういう設定ならいろんなことができますよね。(刀剣男士にはいっそうつらそうな設定ですけど)

3作目は駄作と相場が決まっているシリーズもののお約束を見事に打破し、破竹の勢いで人気を増していくミュージカル刀剣乱舞。チケットの入手難易度はどんどん上がり、愚かな私はなんと凱旋公演のチケットを手に入れることが出来ないまま29年度を迎えることとなりました。ライビュも全て外れたので一般チャレンジです。悲しいことです。トライアル公演から追いかけてきた自分としてはもう三百年の子守唄が生で見られないことは身が引き裂かれるように辛い。何度も行くなんて他に行けていない人のことを考えていない、という向きもありますが、あんなもん何度もみたいに決まっているじゃないですか????戦いは人間の本能です。みんなでチケットを巡って正々堂々殴り合いましょう。4作目があるなら絶対めちゃくちゃ通うのでよろしくお願いいたします。しかしなんだって800席しかない劇場でやるのでしょうね。一刻も早く東京ドームを手配してほしい。それができないならアイアを3階建てにしてほしい。今大阪公演をやっているところですが、出演されている役者さんが「3階までいっぱいでうれしい」というようなことを仰っていてかわいい、うれしい、という気持ちと同時に臍を噛む。何故東京公演には3階がないのだ。私も3階で全然構わないので刀ミュが見たい。飛梅のように今すぐ大阪に飛んでいきたい。そんな気持ちを抱えていまこの記事を書いています。三百年の子守唄を見ていたらあまりにも刀ミュが好きな気持ちを抑えきれなくなりトライアル公演からDVDを見返してしまいました。これが何度見ても本当に最高ですよね。

2015年の秋でした。トライアル公演を初めて見たときの感動は忘れることができません。観劇後、身体の中に渦巻く熱を持て余して、上着を脱いだままアイアから明治神宮前までの長くて緩い坂をひたひた歩いたことを昨日の事のように思い出せる。興奮しすぎて視界が白く曇っていた。あのなんもないただの道があんなに美しい世界に見えたのは後にも先にもあれが最後でしょう。

求めよされば与えられん、というのは聖書にある言葉ですが、正直博打のような気持ちで見に行った「ミュージカル刀剣乱舞トライアル公演」は私が刀剣乱舞on-lineに求めてやまなかったものをそのまま渡してくれたのです。

 

刀剣乱舞に求めていたもの

「刀剣乱舞」という作品の面白いところは、登場する刀の数だけエピソードが存在するところだと思います。刀剣乱舞のキャラクターは皆、自分の中に自分に魂を吹き込むことになった物語や人の想い、歴史を内包しているんですね。にわかながら歴史物が好きな自分としては堪らない設定でした。

またゲームのストーリー大枠もいいですね。「歴史修正を目論む敵と戦う。」これ今までにあまりないんじゃないでしょうか。多くの物語の主人公は、ハッピーエンドを掴むため現実を変えようと過去に干渉しますが、刀剣乱舞は逆なんですね。望む歴史を手に入れるために過去を変えようとする、ハッピーエンドを求める敵を倒す。誰かのバッドエンドの(場合もある)正史のために。そして刀剣男士の持つエピソードは刀の来歴や伝承、過去に依拠します。刀の持つエピソードや彼らを所有していた持主のエピソードは、多くが大団円には終わりません。つまり彼らは過去、自分に魂を分け与えた元の主の死や失意や絶望の歴史を守り、「時の政府」にとっての大団円を作らなければならないのです。「審神者なるもの」とともに。

正直めちゃくちゃいいですよね。面白い。面白そう。「正史」を守る「物」の葛藤。今までにない物語です。天才の所業としか思えないぐらい面白い。

ところがどっこい、原作の刀剣乱舞on-line。ストーリーは遅々として進まない。イベントが楽しめるときも、まま、あるけれども、ゲーム性はほぼクッキークリッカー・・・ひたすら画面をクリックし、敵を倒し、鍛刀、ドロップ、演練・・・。どれだけ画面を見つめても、近侍は同じセリフしか喋りません。たった数語。運が良ければ好きなキャラに回想がある。回想は数秒。どれだけログインしても縮まらない近侍との距離。とりあえずあたりは柔らかいが何を考えているのかわからない私の刀剣男士たち。こんなにお前が好きなのに、何故こんなにも好きなのか自分でもわからない。理由を付けるにはあまりに原作の情報が少なすぎる。誰かが書いた二次創作で妄想を食いつなぎ、「ああ、でも原作はどうかよくわからんのだよな・・・」と我に返る日々。あのときはそもそも「うちの本丸」という概念すらなかったのである。

二次創作界隈では『オリジナル審神者』、もっというと『ブラック本丸』が爆発的に流行っていました。『オリジナル審神者』は作風が非常に多岐にわたるので置いておきますが、『ブラック本丸』、これは審神者と刀剣男士が対立する話が多いです。先述した物語全体の仄暗い背景設定と自本丸の刀剣男士とのたった数語しかないディスコミュニケーションの末の妄想の行先としては全く理解できないでもない(まあ夢厨最強の泥沼カテゴリ「嫌われ」というものが各ジャンルに存在しているのも事実でその一種とも言えますけど)。

自分を大切にしていた主が死ぬ歴史を守らせ、自分を粗末に扱った人間を憎み、荒ぶる神となる刀剣男士。かわいそう。悲しい・・・。

そうだよね。刀剣男士かわいそうだよね。どう思ってるんだろう、人間のこと。普通に許せなくない?でも刀剣男士って主体性がないんだよね。キャラボイスとか聞いてても「何がしたい」とか「こうなりたい」とかはあまりないんだよね。欲がない。歴史物だからと思って戦国バサラの主題歌とかと合わせて刀剣乱舞やるとBGMの自己主張と自己顕示欲が強すぎて刀剣乱舞が掻き消える。絶望的に権力志向がない!!!!刀剣男士「物」だから!!!!この身を酔わずものに野望という名をつけない!!!刀剣男士!!!!

願っていました。切実に「物語」がほしい。「物語」を通して刀剣男士のことを知りたい。いまの状況をどう思っているのか知りたい。過去のことをどう思っているのか知りたい。願いはないのか、希望はないのか、何が好きで何が嫌いか、大事な思い出はあるか。とにかく自分の話をしてほしい。もっと刀剣男士のことをわたしに教えてほしい。

 

ミュージカル刀剣乱舞トライアル公演の観劇

そんなときコミックアンソロジー以外ではじめてのメディアミックスとしてミュージカル化の話を聞いたのです。

正直、私は失笑していました。だって刀剣乱舞ってストーリーないじゃないですか。何をミュージカルでやるの?という話です。ピクシブで流行りの女審神者とのラブコメとか見せられたらどうしよう。文字だったら楽しめるけど実体としてそれが目の前に現れたとき発狂しない自信がない。解釈と呼べるほどの何かもないけど謎のこだわりだけは無駄に抱えている。言語化はできないが踏み抜かれた地雷はすぐわかる。最低のファンですね。そんな私ですが取り敢えず刀剣乱舞が大好きだったのでチケットを手配し、ライブがあるという話だけは聞いていたので(なんだそれウケる・・・と思った)テニミュセカンドドリライのために買ったキンブレを持って行きました。

まあ、それで結果は言わなくてもわかりますよね。

ミュージカル刀剣乱舞の脚本にぶん殴られて帰ってきたわけです。ノーガードのところを思いっきりストレートでぶっ飛ばされました。ふつうそこまでします?と思った。

またライブで偏差値をマイナスにされた私は、刀ミュの話しかしない妖怪と化し、口座残高との相談もなしにチケットを沢山追加することになりました。

ここで簡単に「ミュージカル刀剣乱舞」が最高だった点を総括します。(文章の流れ的には脚本の最高さだけ書けばいいんですけど、全部最高だったので取り敢えず全て総括)

◎脚本が最高だった点

 ・求めていた「刀の持つエピソード」、「元の主との関係」、「審神者との関係」 が、「刀剣男士としての使命と人としての心や情に揺れて葛藤する刀剣男士の物語」を通して一気にクリアにされた。

 ・刀剣男士が基本的に自分の役割や今の主人を大切に思い、「ひとの役に立ちたい」という想いで前向きに頑張っていることが分かり、刀剣男士のことがもっともっと大好きになった。

 ・物語の始まりから結末までの流れがありながら、主要登場人物一人一人の課題・克服のエピソードを交錯させつつ、大団円に向けて一気に駆け抜けていく、構成の巧みさが見事だった。

 

◎演出・構成が最高だった点

 ・プロジェクションマッピングを惜しみなく使った背景。元がオンラインゲームなので世界に入りやすかった。

 ・本公演を見越して歌を少なくして、「物語」をわかりやすくした。

 ・2部に分けてライブを入れた。2部のライブは2.5次元の舞台では初めての試みだったのではないか?初演ではかなり話題になった覚えがあるのでそうだと思う。私は初めて「mistake」が目の前で歌われたとき「MMDの世界だ・・・」と思った。隣に座っていたお姉さんも「MMDだ・・・」と言っていた。不思議と今になってMMD感を感じることはなくなっているのだが、刀剣乱舞はMMDの発達したジャンルで、「知らないイケメン」が「知らない歌」をいきなり歌うという異次元の空間に全く違和感がなかった。

 ・刀剣男士の中の人を出さなかった。トライアル時点では役者は公演中の衣装写真等は徹底してSNSにあげなかったしほぼツイートもしなかった。千秋楽のあいさつもキャラクターとしてした。

(尚最後の2点のノウハウネルケ主催の舞台「プレゼントファイブ」の転用かな)

◎役者が最高だった点

 ・刀剣男士がウォーボーイズだった。(マッドマックス・怒りのデスロードより)

 どういうことかというととても必死だったということなんだけど、ただ必死なのではなく、できていないことややれていないつらさをさておいて何はともあれ「俺を見ろ!!!!!!」という熱量を感じさせる必死さだったのである。(「俺を見ろ」についてはマッドマックス怒りのデスロード見てください。大好きなニュークスくんの名台詞です)

 三条派の皆さんは特にトライアルは課題が多くて・・・というようなコメントが散見されるのだが、あの熱量は2.5次元版刀剣乱舞の初演を飾るに相応しい熱さだったと思うよ。たしかに粗削りだったけど、中の人のひたむきさが役柄に反映されているところも沢山あって感情を揺さぶられるシーンがたくさんありました。あの感動は生でこそ伝わるもので、トライアルは絶対に生で見たほうがいいと私は思う。トライアルのよさは生でないとわからないんですよ・・・でもトライアルはもう二度とやれないんですよね。だってみんな、物凄く練度上げてうまくなったものね。刀剣男士がみんな売れてて私はハッピーです。

 そのようなわけで、これからも未来永劫ミュージカル刀剣乱舞を応援しています。刀剣乱舞にはじめてきちんとした枠組みの物語をくれてありがとう、刀ミュ。そして御笠ノさんと刀ミュ制作に関わったすべてのみなさんに御礼申し上げたい。素敵な夢を見せて下さり、ありがとうございます。

 新撰組with蜂須賀虎徹も赤坂でライブやってください。